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自然と共に生きる

(2011年6月)

まぶしく輝く氷、陽光にほんのり茜色に染まる雪原……、心奪われる美しい顔を見せたかと思えば、時に牙をむく。それが南極の自然です。

強風が吹き荒れ、伸ばした手の先もかすむほど視程が悪くなるブリザード。昭和基地の壁や床が揺れ、地震のようです。外出禁止令が出ると、皆一斉に無線や内線電話で通信室に所在を知らせます。別の建物にいたら、食事の時間が来ても出てはダメ。数十メートル先でも帰って来られず、非常食で我慢します。

厳格なルールは1960年の1人の隊員の遭難がきっかけでした。猛吹雪のなか基地の目の前で帰れなくなってしまったのです。一面真っ白な世界で方向感覚を失う「ホワイトアウト」。亡きがらは68年、約5キロも離れた隣の島でみつかりました。

ブリザードには意外な面も。実は気温が上がるのです。低緯度の温かく湿った空気が流れ込んで来るからです。内陸の高地にあるドームふじは零下80度近くになる極寒の基地。「すごい吹雪が」と思えば、風は穏やか。空気はからからに乾き、雪はわずかしか降らないのです。一方、セールロンダーネ山地(セルロン)では強風がやまず、重いスノーモービルが倒されることもありました。

刻々と表情を変える自然と向き合う緊張感を忘れたら、命取りになる南極。自然に勝とうなんて考えるのは間違い。共に生きていく術すべを探らなくてはいけないのです。

昭和基地ではいろんな風車で発電を試みてきましたが、強過ぎる風に壊されてばかり。でもセルロンでテント生活した時は太陽光発電ができました。パネルはまるめて運べる軽量の特別製です。

それは今、津波にのまれた宮城県石巻市北上町に!高台に逃げた友人から「電気も燃料もない」と聞いて観測隊員が届けたのです。南極の氷上で温かいコーヒーを沸かしてくれた太陽の恵みは今、避難所でテレビを動かし、ニュースを届けています。
(朝日新聞報道局記者 中山由美)

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