水の中の不思議な世界
(2011年8月)
初夏の日差しでも冷たさが残る三陸の海に潜水取材しました。津波の爪痕が残る海には、ソファ、柔道着……見上げると家の壁が浮いていました。海底で見つけた写真には少女とほほえむ男性。生活のにおいが海中に眠る不思議な光景でした。
南極にも水の中に不思議な世界があります。緑のじゅうたんに覆われたような湖の底。外は荒涼とした大陸沿岸の岩場なのに、点在する湖にコケが小さな森のように生えているのです。帽子のような物体は蘚類(せんるい)のナシゴケの塊に藍藻(らんそう)や緑藻がついたもので、「コケボウズ」と名づけられました。
南極の湖に生えるコケボウズ=国立極地研究所提供
大きいものは高さ80センチ、こんなに育つには千年かかるかもとのこと。三角錐のようにとがったものも、ゆらゆら。どこから来たのか、に包まれています。
湖は雪や氷がとけてできたものですが、塩水の湖もあり、約3,500年前、地盤が隆起して海水が取り残されたと考えられています。魚はいませんが、小さなソコミジンコがみつかりました。大陸沿岸の冬は零下50度くらいになるのに、湖面の厚い氷の下は水のままで、外より温かいので生きていけるのです。
陸上は、草木も生えなければ昆虫もいない世界。でもよく見れば、緑のオオハリガネゴケ、茶褐色のヤノウエノアカゴケといったコケ類、岩にこびりつく赤や黄色の地衣類が所々に、約60種類も。
顕微鏡でのぞくと何かもぞもぞ……約0.3ミリのずんぐりしたクマムシです。水分がなくなると自ら乾燥してまるまって「乾眠」し、零下272度や151度という極寒や高温でも、7万5千気圧でも死なない超強者!小さくてもたくましい生き物たちですね。
ところで岩手・山田湾取材の後日談。見つけた写真は、3カ月海につかっていたとは思えないほどきれいで「やらせ疑い」まで出たほど。でも6月7日付朝刊掲載記事の写真を見て、「私の娘」と少女の母親から電話をいただきました。大切な思い出は、無事だった少女へお返ししました。
(朝日新聞報道局記者 中山由美)






