ペンギンも衣替え
(2011年9月)
暑い時に「暑い!」と言っちゃいかんと思いつつ、でもやっぱり……とけてしまいそうな日差しにはうんざりですね。こんな時「地球で一番寒い南極の話は一番!」と伊豆で講演させていただきましたが、冷房のない体育館で、聞く方も話す方も汗だくでした。
そんななか、子どもたちに大受けだったのはペンギンの「衣替え」です。
南極の夏、12月に生まれたアデリーペンギンのヒナは灰色のむくむくの産毛に包まれ、まるで綿ゴミの塊みたい。かわいいというより、ちょっとみすぼらしくも見えます。エサをもらって大きくなっていくと、白と黒がくっきりした大人の羽毛に生え替わります。産毛が抜け始める頃は奇妙な格好で、頭の上にだけ残ってアフロヘアになっているのもいました。
大人のアデリーペンギンも2〜3月ごろに、夏毛から冬毛に生え替わります。「換羽(かんう)」といって、この時期もまたおかしな姿をあちこちで見かけます。「襟巻き」だったり、「モヒカン刈り」だったり。ペンギンの着ぐるみを着たようなペンギンに出会った時は大笑いしてしまいました。
南極・西オングル島で出会った“着ぐるみペンギン”
そばでばちばちシャッターを切っても、ちっとも逃げる気配はありません。ぼーっと直立不動。実はこの状態では海に入れない、つまり逃げられなかったのです。
ペンギンは氷の上では短い脚でよちよち、不格好に歩きますが、海に入ると弾丸のごとくすごい勢いで泳ぎます。滑空するような見事な泳ぎは、羽毛が水をはじくからできるのです。尾の付け根にある尾脂腺(びしせん)から出る脂を、くちばしやフリッパー(翼)を使って羽毛に塗っているのです。これなら冷たい南極海でも皮膚までぬれず、凍えることもありません。
でも羽毛が生えそろわないと毛繕いもできませんね。海にも入れないので、オキアミなどエサも捕りに行けません。換羽が終わるまでなんと2〜3週間の絶食!この辛抱強さを、私も見習わなくちゃ。
(朝日新聞報道局記者 中山由美)






