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試される 現場を見る目

(2011年10月)

新聞記者になるとまず、現場を踏むことの大切さを教えられる。もっとも、現場へ行きさえすればよい、というわけでは決してない。現場で何を、どう見るのか。それ次第で、全く違う記事になることもある。

中国での高速鉄道事故をめぐる報道がその好例だ。

大事故とあって、日本人記者たちも現場に駆け付け、署名記事が翌日の朝刊(2011年7月25日付)1面トップを飾った。しかし、合わせて「車両壊し埋める」という見出しの記事を載せたのは、朝日新聞だけだった。目の前でショベルカーが車両を壊し、掘った穴に埋めてしまうまでの一部始終を目撃した、とある。

証拠となる車両を壊すことはむろん日本では考えられず、今回の事故を象徴する一場面だったことは間違いない。原因究明への努力が全く伺えない当局の姿勢は中国でも批判を浴び、結局掘り返すことになった経過は、広く知られることになった。

目の前で起きていることの意味をしっかりとらえて報じた奥寺淳記者の目が光った記事だった。

駆け出しのころ、先輩から聞かされた話がある。1959年に伊勢湾台風が東海地方を襲い、大きな被害を出したときのことだ。

東京からやってきた名物記者が一回りして帰った。そして書いた記事は、工場の労働者の家は低地にあって水浸しになる一方、工場は高いところにあって水没を免れている、というものだった。

地元でずっと取材していた記者たちにはない視点で、先輩たちは舌を巻いたそうだ。

だから、今でも現場へ行くと緊張する。見落としていることはないかと。
(朝日新聞論説委員 辻 篤子)

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