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自然にどっぷり 極寒の野外生活

(2011年11月)

水や電気がないとどれほど不便か、震災で多くの人が味わったことでしょう。「温かいふとんの上で寝られるってすごい」――なんて普段は考えませんが、長い野外生活をした後は実感します。

私は南極で長期の遠征を2回経験しました。45次隊では越冬の前半を昭和基地で過ごし、後半は1,000キロ離れたドームふじへ。大陸の内陸にあり、標高3,810メートル、最低気温零下79・7度を記録した極寒の基地です。

自然にどっぷり 極寒の野外生活

極寒のドームふじ基地で熱湯をまくと、あっという間に凍り、真っ白な粉をまいたよう

11トンの大型雪上車で1カ月走ります。時速10キロ。エンジンに負担をかけないよう、燃料ドラム缶や食料を載せた重いそりを7台も引っ張るからです。給油は手回しポンプ、低温でも凍らない特別の軽油ですが、粘性が増して力がいります。

毎日見えるのは白い世界と空だけ。寒さと空気の薄さが増していきます。食事も睡眠も雪上車の中。気づけば1,000キロ四方、自分たち以外に人間も生物すらいない、とてつもない開放感と不思議な閉塞感もある——精神的たくましさも求められる旅でした。

51次隊では1カ月半、セールロンダーネ山地(セルロン)の氷の上でテント生活しました。つらいのは強風。零下十数度が零下30度にも感じます。猛吹雪でテントがずたずたにされた隊員たちもいました。

でも私たちは大胆にも氷の上にマットを敷いて一晩、寝てみました。もちろん穏やかな夜ですが。「野宿」でなく「雪宿」?星空を見上げれば「地球に寝そべっている」って開放感がわいてきます。

野外での食事は冷凍やレトルトをよく使いますが、セルロンではフリーズドライをメーンにしました。氷や雪をとかして水をつくることは、何よりも大事な仕事です。折りたたみ式の太陽光発電パネルを使って発電し、朝、熱いコーヒーを氷原ですするのは、ぜいたくなひとときでした。

過酷と言えば過酷。でもそんな非日常が……いや自然にどっぷりつかる生活、これこそ日常?――そんな風に思えてきたら楽しいものです。
(朝日新聞報道局記者 中山由美)

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