サングラスに映った右腕
(2012年1月)
1面に掲載された写真
1月8日付けの日刊スポーツの1面に掲載されたレッドソックス松坂大輔投手の写真は見どころがあった。右肘手術後、キャッチボールを再開した直後の1枚だ。故障前よりボールを離す際の右肘の位置が高くなっている点を、大魔神・佐々木主浩氏の評論とともに指摘している。本人も写真を見て「思ったより高く上がっていますね」と言っている。
1月8日付の日刊スポーツ首都圏版、静岡版の1面に掲載されたレッドソックス松坂の写真。
右肘が肩より高く上がっている
右肘は肩よりも高く
写真を見る様子は偶然、テレビのニュースでも放送された。投手の右肘は左右の肩を結んだラインよりも高い位置にあるのが、基本だとされる。球威、制球力が落ちるだけでなく、肩や肘にかかる負担が大きく故障の原因にもなる。松坂はここ数年、好調時より右肘が下がり、サイドスロー投手のように、右腕が横振りになっているのを指摘されていた。
故障を招いた欠陥
もっとも、サイド、アンダースローの投手も肩のラインより肘が下がってはいけないとされている。「基本」を怠った松坂のフォームは、不調だけでなく故障を招いた。素人が一見しただけでは分からない「欠陥」だが、この日掲載された以前の写真と比べると一目瞭然。佐々木氏の評論も説得力があり、全国の投手に見てほしい紙面だと思った。
美しい風景とともに
もう1つ注目したのは、サングラスのレンズに映った風景だ。フロリダらしい青い空とグラウンドの緑。その奥の木々も鮮やかなのだが、右のレンズの右端に、ボールを離す瞬間の右腕がしっかりと映っている。松坂は正面を向いたままだ。これは、投手だけでなくキャッチボールの基本を示す貴重な1枚だと思った。
サングラスをアップにすると右腕が映っているのが分かる
キャッチボールの基本
子供のころ、野球が上手な先輩にキャッチボールを教えてもらったとき「ボールを離すのは早くても、遅くてもダメ。投げる方を向いたままボールを握った手が見えたかなあと思う位置で離すのが理想」と教えられた。以来、意識の隅に置いているのだが、投げ方がよくなかったり、肩が痛かったりすると見える前にボールを離してしまう。
ボールが見えたら離せ
すると、力のないボールはとんでもないところに行ってしまう。実感としても残っている「見えたら離せ」だが、野球記者になり、プロ選手や指導者も同様に話していた。教えてもらった基本に間違いはなかったのだが、画像として示されたのは、この松坂の写真が初めてだった。これも全国の野球少年に見てもらいたい部分だった。
「一目瞭然」の説得力
スポーツ新聞の使命とは…と考えることはあるけれど、こんな間近でしか見ることのないプロの技術や基本を、読者に分かりやすく伝えることも有意義だなと感じた紙面だった。それに、動画やそれをコンピューター解析してスポーツを科学する分野もあるが、1枚の写真が物語る「一目瞭然」の世界も説得力がある。
快腕の写真を土産に
松坂が21歳のころ、私が初めてメジャーリーグを取材した。現場のカメラマンにお願いして、彼があこがれる快速球投手でありながら多彩な変化球を操るペドロ・マルチネスの
「手元」をアップで何枚も撮ってもらい、土産にしたことがあった。それを見ると宝物のようにすぐバッグにしまっていた。今回、右肘の位置を確認した時と同じ笑顔だった。
(日刊スポーツ静岡支局長 久我悟)





