静岡で最初に酔った酒
(2009年11月)
静岡支局に赴任が決まり、前支局長との引き継ぎのため静岡に訪れた夜のことだ。当然、引き継ぎは支局外で行われることになる。もちろん、支局員も同席だ。支局近くの居酒屋で出されたつまみはどれもおいしいし、若手からは「また太りますよ!」と脅された。
そして、生ビールから焼酎に移ろうとしたときに、どうやら支局のムードメーカーとして活躍しているタメダ記者が「せっかくだから」とボトルとともにお茶を頼んだ。「『静岡割り』って言うんですよ」。
お茶は深い深い緑色だった。これぞ緑茶だ。見方によっては青汁だ。東京でも緑茶割りを飲んだことはあるが、2リットルのペットボトルから注がれたお茶だったと思う。「生茶割り」とうたっている店もあった。「お~いお茶割り」はなかったけど。
それがこの店はオリジナルで入れている。口をつけると、少しとろっとした感触とともに、じわじわと甘みが広がってくる。これはうまい。すぐ飲んじゃう。若手とは初めてかわす酒なのに、最後は「早く作れ!」とばかりにグラスを差し出していた。
泊まっていたホテル近くのコンビニで、缶入りの「静岡割り」を発見してまた感激。けれど、どうも初めて飲んだあの店の色と甘みと感触が忘れられない。ついには新調した財布も名刺入れもかばんも緑に。静岡割りに酔ってしまった。
赴任してからもしばらく、仕事を終えると静岡割りを求めて深夜営業の店を回った。なかなか同じように五感を酔わせてくれるものはなかった。いつしか「ミスターウーロン杯」の異名をとった私が、静岡割りにうるさい男と化している。
そこまで飲みたいなら最初の店に行けばいいのだが、実は当方の仕事が終わる午後11時ごろが閉店時間なのだ。時々、30分ほど早く終わりそうになるとそわそわする。だから、支局員には悟られないように言っている。「原稿は早くしろよ!」。
(日刊スポーツ新聞静岡支局長 久我悟)





