大人は手本になっている?
(2010年9月)
始発駅から乗った電車はほぼ満席で、駅に止まるたびに立っている人が増えていきました。ふと顔を上げると、斜め前の席に座っている60代くらいの女性の姿が目に入りました。その女性は、自分の荷物を脇に置いていました。「あ~あ、あのバッグを膝の上に載せれば、もう1人座れるのに…」と思った瞬間、去年の夏に見た兄妹の姿を思い出しました。
その日の電車はとても空いていました。とある駅で乗り込んできた兄妹。お兄ちゃんは中学生で妹は小学3,4年生くらいだったでしょうか。夏休み中のことなので、親戚の家にでも出かけるところだったのかもしれません。2人とも大きめのバッグとほかにも何か荷物を持っていました。
電車に乗るとすぐに、お兄ちゃんはそれぞれのバッグから本を取り出し、2人のバッグを網棚に載せ、そして仲良く並んで座りました。その手際のよさとてきぱきとした姿だけでも十分感心させられたのですが、お兄ちゃんに感心させられたのはそれだけではありませんでした。
その後しばらくお兄ちゃんは本を読み、妹は景色を見たり本を見たりしていたのですが、そのうち膝の上に載せていた荷物が邪魔になってきたのでしょう。妹は空いていた隣の席にひょいとその荷物を置いたのです。
すると、熱心に本を読んでいたはずのお兄ちゃんがすぐにそれに気づき、妹が隣の席に置いた荷物を取ると自分の膝の上に乗せ、一言二言妹に声をかけるとさっと立ち上がり、網棚にそれを置いたのです。
そしてまた妹の横に座って「ここから向こうに、はみ出しちゃだめだよ」とでもいうように妹が座る位置をさり気なく示しました。その日の電車はとても空いていたのです。その兄妹が座っているシートの列には兄妹しか座っていなかったのです。
「最近の若者は」ということばは、3700年前のエジプトの壁画に記されていたそうですから、大昔から大人は「最近の若者は」と言い続けてきたのでしょう。けれど、「最近の若者は」と言えるためには、大人が手本となる行動をとることが必要ではないでしようか?
自戒を込めて、相変わらず2人分の席を使っている女性を見ながら去年の兄妹を思い出していた私の目に、周りの人の迷惑にならないようにたくさんの荷物を自分の膝に抱える高校生が見えました。
(山葵キクヨ)





